武の実力を測り間違えている?
すぐに私はそう判断した。
武も少しだけ表情を歪めたが、すぐに状況を理解した様子で次の一手を撃ってきた。
次に私に飛んできたものは鋭利な氷。水よりも強力な一撃。おそらく今の私の実力なら一瞬で溶かせるもの。避ける暇はなさそうだ。
ジュワッ!
私が放った火によって、氷は音を立てて水へ変化した。そしてその水はいくつもの水の組織へと分かれて私を襲ってきた。
氷がダメでも水で攻める!
よく考えられている一手だ。
でも…
ボオウ!と私を包む大きく力強い火…いやこれは炎と呼んだ方が良いだろう、その炎によって綺麗に水は蒸発されてしまった。
「チッ」
武が悔しそうに私を見る。
やはり普通にやり合えばこちらに武がある。間違いなく私が勝つ。
この一瞬の攻防でそう私は判断した。が、別に私はこの実戦で勝ちたい訳じゃない。
どうでもいいのだ。実戦の結果など。ある程度麟太朗様の期待に応えられれば十分だろう。
前の私ならおそらくそうは思わなかった。でも今は違う。頑張ることに疲れている、最低限でいい。だって私は頑張った所で報われない。どうせ最後には1人になる。
いい感じに負けよう。
元から決めていたことを再度確認し、武の方へ突っ込み、武との間合いを一気に縮めた。
そんな必要はないのに。
近い距離で先程よりも気持ち弱めで火を放つ。この距離なら武は避けられない。
その火を消す為に出された水。その水は見事に私の火を消した。
そしてその水は氷へ変化し、そのまま私のチョーカーへと飛ぶ。武が避けられないのなら私だって避けられない。
…本気を出せばその水を先程の炎のように消すこともできるが。
でも私は消さなかった。わざと焦った表情を浮かべてそれを受け入れた。
カチャンッ
それは私が付けていたチョーカーが壊れる音。



