リリリリリリッ!とけたたましい目覚ましの音で私は目を覚ました。
この目覚ましは1人では寝坊しかねないと思った朱が昨日セットしたものだ。
はっきりとしない意識の中で機械的にいつものように洗面台に向かい顔を洗う。
体は起きているが脳は寝ている感覚だ。
フラフラとおぼつかない足でいつもなら朱の助けを借りてしていることを1人でこなす。
ああ、私は随分朱に甘えていたのだな。
いつもと違う感覚にふとそう思った。
1人では色々なことがままならない。
洗面台に向かうまで何度もどこかに体をぶつけ、顔を何とか洗ったのはいいがタオルの場所がわからない。
予め準備していなかった為顔がびしょ濡れのままタオルを探し回った。
ついこの前までは1人だったのでこんなことにはならなかったのだが。
たった1週間でこうも変わってしまうとは驚きだ。
部屋を大分徘徊して顔が半乾きになったところで私はそう思った。ついでに目も覚めてきた。
ここは男子校だ。
身だしなみも整えず、部屋から出て食堂に向かう。
部屋着で寝癖もそのまま。でも顔はもう乾いた。
著しい女子力の低下はこの環境のせいであり、私のせいではない。
…そう、断じて私のせいではないのだ。
「おはよ、紅」
「……ん、はよ、蒼」
食堂の前に何故か立っていた蒼がいつものようににこやかに私に挨拶をしてきたので私も何とか挨拶を返す。
目は覚めているが眠いのには変わりない。
誰かを待っている様子の蒼の横をすり抜けて私は食堂に入った。



