とりあえずは本当のことを伝えてみよう。
姫巫女が見つかっていないという事実だけではそうそう何かできるとは思えない。



「まだ見つかっていないよ。妖側も姫巫女を探しているんだよね?」

『ああ、能力者よりも先に見つけた方が都合がいいからな。だが俺たち妖が能力者より先に姫巫女を見つけたことはこの長い歴史の中でもない』



それはきっとシナリオがそうさせないからだろう。

そう思ったがもちろん口には出さなかった。
やはりどちらも姫巫女を見つけられていない。

蒼が見つけなくてはいけないのだろう。
だが本人は探していない。


例えば春までに姫巫女が見つからなかったとして春から世界はどうなってしまうのだろうか。

私は1度目のように独りには絶対ならないことが保証されて、龍の封印は完全に解ける。
そこからきっと龍vs能力者の全面戦争が始まるだろう。

だからそれを私が何とか事前に食い止めて和解といかなくてもお互いを守るルールでも取り決められれば世界は平和になって文字通り救われるのではないのだろうか。


それなら姫巫女は見つからない方がいいのでは?



『何か心当たりでもあるのか?』



急に黙って考え込んでいる私を見て龍は興味深そうに私に話しかけてきた。



「いやないよ」



姫巫女の姿を見た街を知っているし、見つからない理由も知っている。
だが、それを龍に伝える気はない。

だから私は真剣な顔でそう龍に嘘をついた。