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ついにやってきたバレンタイン当日。
朝、いつものように私を起こしに来た朱に私は早速前日に作ったチョコレートを渡していた。

あんなに試行錯誤したのに簡易化的な部屋のキッチンでしか作れなかったのでチョコを溶かして固めただけのものだが。



「兄さん!ありがとう!」



それでも私のチョコレートを受け取って心底嬉しそうに笑う朱を見て簡単なものだが作った甲斐があったと思えた。


本日は朱以外にも琥珀を初め、武、蒼、あと龍にもチョコを渡す予定だ。

みんな喜んでくれるといいんだけど。


みんなの朱のように喜ぶ姿を想像して私は少しだけ頬を緩めた。

みんなの反応が楽しみだ。





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朱の次に会うのは同じクラスである武だ。
教室に入ってすぐに私は武の元へ向かった。



「武、おはよ」

「おう、おはよ」



いつものように武に挨拶をすると武もいつものように挨拶を返してくる。

何も変わらない朝の光景だ。
だが、今日だけはいつもと違うことがある。


そう思いながら私は鞄からチョコの入った袋を出した。