side紅



いろいろあった帰省から約1ヶ月が経った。
全てを朱に知られてしまった訳だが、朱と私の関係は何も変わっていない。

朱は今でも私の可愛い弟のままで、私もそんな朱を相変わらず受け入れている。


『ずっと姉でなければいいのにと思っていた』


それでもあの時私を抱き締めたままそう言った朱の言葉が忘れられず時々こうして思い出してしまう。


最初はただただ訳がわからなかったけれど数日が過ぎ、冷静になるにつれて朱が私に向ける感情について私は落ち着いて考えられるようになっていた。


朱が私を姉としてではなく異性として好きなのではないのか。


答えは何となくわかっているが軽率に決めつけたくない思いから見て見ぬふりをしてしまう。

今の関係が壊れてしまうのは嫌だから。


こんな煩悩だらけでどうしようもない時は寒くても逆に外でしっかり鍛錬をするのが1番だ。

寒い中、集中して鍛錬すると頭の中がスッキリするし、何より何も考えなくてもいいので気持ちが軽い。


誰もいない寮内の小さな庭で私は1人で集中して手のひらから上に向かって火を出していた。


ボッ!とまずは小さな火を出してそこからゆっくりと大きな火へと変化させていく。

力をゆっくりと変化させるのことは繊細で微調整がいる為思っている以上に難しい。