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気が重たすぎた新年会も無事に終わり、夜になった。
もうここにいる必要はなくなったので私はいよいよ明日寮へ戻る。
やっとこの疲れる生活が終わるのだと思うと心が軽い。
新年会が終わってすぐ帰ることを父に伝えるとどこか気に食わなそうな顔をしていたがそんなもの知らない。
私はアナタたちの側に居たくないんですよ。
「…」
自分の部屋へ戻る為に夜の縁側を1人で歩く。
縁側の向こうに広がる園庭には小さな池やそれを囲うような自然があり雄大だ。
さらに今日の夜空には雲一つなく、星がよく見え、ここから見える全てが美しかった。
綺麗だな。
そんなことを思いながら歩いているとふと私は1度目の今頃のことを思い出した。
『朱を次期当主にしてください。紅にはその資格はないはずです』
母の低くく、真剣な声が襖の向こうから聞こえたのはちょうど今日のような日だった。
そこから私は全てを聞いてしまった。
そして絶望した。
今日がその日だとは限らない。
1度目の記憶はあってもそれを正確に記録している訳ではないから。
それでもそれが今日のような気がしてならなかった。
分かりきっていることだが、またもう一度真実を聞きたいとは思えない。
心を抉られるのは一度だけで十分だ。



