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「はぁ」



息の詰まる食事会を終え、自分の部屋に戻ると私はすぐにベッドへ勢いよく倒れ込んだ。

ごろんと、寝転がり、また「はぁ」と息を吐く。


やっと解放された…。

せっかく葉月家お抱えの料理人による最高級の食事なのにあんなクソみたいな空気のせいで全く味わえなかった。


リラックスして笑顔で「美味しい!」てしっかり味わいながら食べたいよ。
もったいない。



「…」



天井から大きな窓へと視線を移す。
カーテンで外は見えないが今日ははらはらと雪が降っていた。

明日には雪が少しだけ積もるかもしれない。


もう冬になってしまった。
姫巫女が現れる春まであと3ヶ月くらいだ。


神様は私が独りになることこそがシナリオの歪みだと言っていたが、また1度目のようになるのではないかという不安はどうしても消えない。

あの春が近づくにつれてどうしても独りになってしまったあの時間を思い出してしまう。



「…」



いや、大丈夫。
私を大切にしてくれている彼らを信じると決めたのは私だ。神様だって私の味方だ。

何も恐れる必要なんてない。


それにもう1度目の世界と2度目の世界ではいろいろなことが大きく違ってきている。

違うところはいろいろあるが、何より大きな違いは何故か秋の終わりに蒼が任務帰りに見つけて来るはずの姫巫女が未だ見つけられていないことだった。

この2度目の世界ではまだ姫巫女の存在自体認知されていないのだ。