父の顔を見るたびに、声を聞くたびにその事実が頭の中を駆け巡り、どうしようもない気持ちにさせられる。

自分の産まれた意味を何度も何度も考えて消えたくなった1度目の感覚が戻ってきてしまう。


だから会いたくなかったのに。



「特に変わりないです。いつも通りでした」

「僕も兄さんと同じです。ただ今は兄さんと一緒に鍛錬ができることが嬉しいです。学校ではなかなか兄さんと鍛錬できる時間はないので…」



父と同じように淡々と答えた私の後に朱が愛らしい笑顔で嬉しそうに今日のことを話す。



「あらそうなの。よかったわね、朱」



するとそんな朱を見て着物を来た優しそうな女、母が本当に愛おしそうに朱を見つめた。
優しい母親の目、私には一度たりとも向けられたことのない目だ。


母のこの目をいとも簡単に奪っていく朱がだんだん憎くなっていったんだよね、1度目は。
無条件に愛される朱が心の底から羨ましかった。

だが、今ならわかる。
母も人間なのだ。本当の子どもではない私なんて到底愛せる訳がないだろう。

その境地にいくまで随分私は傷ついたものだ。


息の苦しい食事会。
これがここへいる間は何度も何度も繰り返される。
1度目と同じ、負の感情がどうしても湧き上がるこの食事会が私は嫌で嫌で仕方なかった。