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最悪な1週間が始まった。


家に嫌々帰省してからは次期当主としてやらなければならないことを滞りなく済ませながらも両親とは必要以上に顔を合わせないようにして過ごしている。

初日に私から軽く挨拶に行って以降一度も私から会いに行っていない。


これで何とか帰省したくない理由であった両親とは距離を置くことができていたが、食事の時間だけ両親に会わなければならなかった。
そして今がその食事の時間だ。



「…」



歴史と威厳を感じる和室に落ち着いた高級感のある4人で使うには大きすぎる机を囲って両親と朱と静かに夕食を食べる。

私の隣には心強く大好きな弟、朱が座っており、目の前には両親2人が座っていた。



「今日の鍛錬はどうだったんだ」



和服を着た気難しそうで綺麗な男、父が義務のように私たち2人に淡々とそう言って私たちを見つめる。

父は昔から私たちには葉月家としての強さしか求めていない。
特に次期当主である私には強くそれを求めていた。
だから私もそれに答えたくて必死に努力してきた。…1度目は。


2度目の今は全て知っている。
私が葉月家の者として立派であって欲しいと願われて強さを求められていた訳ではないことを。

本当の息子である朱の身代わりとして私は圧倒的な強さを求められていただけだった。