そこまで私を引き止めたいのか。



『俺の力も貸してやる。それなら紅に…』

「龍!いい加減にして!」



なかなか返事をしない暁人に話し続ける龍の言葉を私は大きな声で遮った。



「そんな手を使われても帰るからね!こればかりは仕方ないって言ってるじゃん!暁人を半殺しにされたい訳!?」



龍の祠に向かってそう怒鳴ると龍の祠の横にいた暁人の表情が変わった。

笑顔が冷たくなった。
怒りの表情だ。



「半殺し?人間が私を?味方だからといろいろ見逃していましたがもう我慢なりませんね。私がアナタを半殺しにして差し上げましょう。龍、力を貸してください」

『…半殺しにはするな。多少の傷だけでことを済ませろ』

「無茶を言われますね。それでどうやってあの人間を1週間も戦闘不能にできると言うのです。殺すつもりでいかなければ龍の願いは叶えられません」

『…』



形勢逆転だ。
先程と全く逆の立場で暁人と龍の話が進んでいる。


相変わらず暁人の人間嫌いがすごい。
本当は私を殺したくて仕方ないが、龍に止められている為殺せないのだ。

少しでも殺せそうな機会に恵まれればこんな感じだ。
こんな感じで1度目も暁人とは何度も本気の殺し合いをしている。



『…クソ。辞めだ、暁人』

「そうですか、残念です」



悔しそうな龍に本当に残念そうに暁人は笑った。

とりあえずは落ち着いたみたいだ。

よかった。
こんなところで暁人と本気の殺し合いをすることにならなくて。



『帰ってきたらすぐに俺のところへ来い。わかったな』

「もちろんだよ、龍」



不機嫌な龍に私は笑顔で答えた。