時間を少し…いやかなり遡ること強化合宿後。
私は龍にすぐにいろいろなことを問い詰めた。


今の龍には本当は力があるのではないか。
少なくとも暁人と繋がりがあること。
強化合宿のことを知っていたこと。


全て強化合宿の時に浮かんだことを龍へぶつけた。
そして結果龍は全て肯定した。

龍は私に嘘をついていた。
初めこそショックを受けたが、龍の話を聞いて受け入れざるを得なかった。



『紅、お前を失わないことが俺の最優先事項だ。その為にお前を殺してしまう人間を殺さなくてはならないだろう。だから俺は人間を殺すんだ』



龍の冷たい声を今でも鮮明に覚えている。
龍には龍の信念がある。
願いがある。

それは私と同じものではない。

私は人間と妖の共存を願い、龍は人間の死を願っている。
こんなにも違う願いを持っているのに同じ志を持てる訳がないのだ。


あの日から龍のことを100%信頼することは辞めた。
そしてある程度龍の嘘が私にバレたことをきっかけに龍はもう隠す必要はないと判断したのか、暁人を普通に私の前に呼び出すようになっていた。

私も何かされる訳ではないので普通にその状況を受け入れていた。




『暁人、今から紅を戦闘不能にしろ。1週間は動けないように』

「…はは、冗談ですよね?」

『冗談に聞こえるのか?多少の傷は許す。今回は仕方ない』

「…」



暁人を呼び出して何をするのかと思えば大真面目に危険な命令を暁人に下す龍に暁人が困惑気味だ。

最初こそにこやかだったその顔も引き攣ったものに変わっている。