side紅



ついに強化合宿当日がやって来た。

秋晴れの空の下、合宿施設のグランドにはいくつもの実戦ができる場所が作られており、そこで高等部の生徒たちはいろいろな対戦相手と繰り返し実戦をしていた。

これが朝から夕方までずっとである。しかも2泊3日も。
いくら生徒の経験値の底上げの為とはいえ、酷すぎる内容だ。

過労死してしまう。


まあ、私の実力だったら、一生徒に全力なんて出さなくても勝てるし、そこまでの疲労感がある訳ではないのだが。

目の前に現れる生徒たちは普通に一つ一つ全力でこなしているので死にそうな顔をしていた。

ご愁傷様である。



「…」



いろいろな生徒と対戦し、1日目も中盤に差し掛かった頃、次の実戦相手の場所に移動すると、そこには琥珀が立っていた。



「よろしく、琥珀」

「ああ、次は紅か。よろしくな」



次の相手である琥珀に笑顔で挨拶をする私に琥珀はいつもの無表情で返事をする。

今まで見てきた生徒たちとは違い、その表情は涼しいものだ。
私と同じ、守護者に選ばれるだけの実力もあり、生徒たちの相手ではそこまで疲れないのだろう。



そういえば2度目になってから当然なのだが、琥珀と手合わせをしたことはない。

2度目で次期当主で手合わせをしたことがあるのは実戦大会の時の武だけだ。

この時期の琥珀はどのくらいの実力なのだろうか。