side蒼



「姉さんから離れてください」



再び眠り始めた紅を見つめていると後ろからひどく不機嫌な朱の声が聞こえてきた。

声だけでも朱が僕にどれだけ嫌悪感を抱いているのが伝わってくる。



「そうやって武も琥珀も追い出したのかな?」

「だったら何なんですか」



くるりと振り向いていつものように笑顔の仮面をつけると朱は僕の予想通り嫌悪感剥き出しで僕を睨みつけていた。

本当に朱は紅以外にはいい顔を一つもしない。

朱にとって紅以外はどうでもいい存在なのだろう。
朱の普段の生活や態度を見れば、紅が朱にとって特別な存在だということは全く無関係な人間でもよくわかるはずだ。

武も琥珀も大量の医者が押し寄せられ噂になっていた紅の様子を心配して紅の元へ向かったようだがこんな調子の朱によって部屋にすら入れてもらえなかったようだ。

「兄さんは今寝ているので遠慮して欲しい」と。

それでも僕はこの目で紅の無事な姿を見たかったので朱が紅から離れた一瞬の隙をついてこの部屋の窓から侵入した。



「武も琥珀も僕だって紅に何かあったんじゃないかって心配したんだよ?姿くらい見させてよ。紅は朱だけのものじゃないでしょ」



僕を睨み続ける朱に僕は呆れたように笑う。

朱の時折見せる紅に対する独占欲。
紅は自分だけのものだと言っているかのような態度と言動。

朱は紅に依存しすぎている。
それに何故か紅は気付けていない。



「…今はそうかもしれませんね。でもいずれ姉さんは僕だけのものになりますから」

「…」



朱の顔から表情が消える。