その為にはまず武を撒く。
単独で行動した方が早い。
「武、トイレ行きたい」
「おお、わかった」
スッと右手をあげてそう主張すると武は淡々と頷いた。
そのまま2人で本部から離れて境内にあるトイレまで向かう。
「…紅、お前、何か企んでるだろ?」
「え?何でよ?急にどうした?」
突然、睨むようにこちらを見てきた鋭い武の一言に内心冷や汗をかきながらも次期当主力を発揮して冷静に私はにっこりと笑う。
「…いや、気のせいだ」
するとそんな私を見て武は一瞬だけ難しい顔をし、大きなため息を吐いた。
疑いは拭えきれていないだろうが、とりあえずはセーフ…と言ったところか。
「じゃあ、武、ちょっと行ってくるね」
トイレにたどり着くと私は武に手を振ってさっさとトイレの中に入った。
もちろん男の格好をしているので男子トイレに、だ。
「…」
トイレに入るとまずは窓があるかどうか確認する。少々高い位置にだが、人1人分通れるくらいの大きさの窓がすぐに目に入った。
よし、これで武を撒くぞ!作戦が実行できる。
まあ、作戦と言ってみたが内容は実に単純。
トイレの入り口から出ず、あの窓から出て武を撒く、というだけである。
トイレにいると思い込んでいる武をこれで数分は足止めできる計算だ。



