「…嫌いになる訳ない。私はどう足掻いても朱が大好きなんだから」
戸惑いながらも私は朱を安心させようと優しく笑う。
そう、私は朱を絶対嫌いなんてなれない。
一度はその境遇の違いに自分から手を離した存在だった朱。だが、2度目の人生でもう一度愛らしい朱と再会した時そのことを私は酷く後悔した。
例え私が朱の身代わりだとしても。朱と違って家族の誰からも大事にされていなかったとしても。それでも私は朱が大好きなのだ。
「…僕も姉さんが大好きだよ。愛している。だからもう屋敷から出したくない。傷ついて欲しくない」
「ふふ。大袈裟だよ、朱。私は大丈夫だから」
「…大丈夫じゃなかったでしょ」
「今回だけだよ。私が誰よりも強いことは知っているでしょ?私より強くなってから家を継ぐ発言をしなさい」
「…じゃあ姉さんより強くなれば姉さんは能力者を辞めてくれる?次期当主も辞めてくれる?」
また暗く危う気な表情を浮かべる朱を安心させようと優しく私は笑う。
「そうだね。私の必要がなくなればそうなるね」
そして縋るように私を見つめる朱に私はそう笑って答えた。
実際そうなるのだ。
私は約1年後、少しずつ要らない存在となり、最後には朱が葉月の次期当主となる。
「わかった。僕、強くなるよ。姉さんよりもずっと。だからその時は…」
暗い表情から希望を得たような表情に変わった朱が私に何かを伝えようとした。
だがそれはこの部屋の扉が開いたことによって中断された。



