桜鈴の着ている十二単は、時雨が桜鈴にあげたものだ。白拍子の舞を踊る時に使う扇も、桜鈴の持ち物のほとんどは時雨が桜鈴にあげていた。

「これからも共にいられると思っていたんだ……」

結ばれることが許されなくても、時雨は桜鈴を離したくはなかった。こんなに急に終わりが来ることが信じられず、時雨は涙を流してしまう。

「時雨様、私の心はいつでも時雨様のことを想っております。次の人生では必ずこの恋を実らせましょう」

桜鈴が優しく時雨に唇を落とす。優しい音が何度も響いた。

「ああ、次こそは必ず……」

桜鈴と唇を重ねながら、時雨は何度も神に来世では結ばれるよう祈った。