「……相良くん、最年少なのにみんなのお母さんみたいだね」
なんて。
思ったことがそのまま口に出てしまって。
「はぁ?バカにしてんの」
また怒らせてしまった。
私と相良くんって相性悪過ぎな気しかしない。
「え、違うよ。褒めてるんだよ!なんだかんだずっと私のこと気にかけてくれるし」
「それは……丸山さんって、なんか見ててヒヤヒヤすから。……それに少し──似てる」
「ん?似てる?誰に?」
そう聞き返したら相良くんはハッとして表情を見せてから首を横に振った。
「いや。なんでもない。てかどうすんの。丸山さん、寝られないって。朝まで起きてるつもり?」
「そんな、まさか。今、相良くんと話してだいぶ落ち着いたから。もう大丈夫だと思う。ごめんね。ありが──」
バタバタッ!!
っ!?
相良くんにお礼を言おうとしたら、突然、ベランダ横の木々から大きな音がして。
目を向けた瞬間、黒い影が横切った。
「ななななに!?」
「コウモリだろ」
「えーー……」
「まさか」
「うん……」
最悪だ。
せっかく落ち着いたと思ったのに。
さっきテレビで見た、大きな影が横切るシーンが脳内で再び再生されてしまって。
「はぁ……」
相良くんの大きなため息が夏の空に消えた。