こんな風に触れられるなんて聞いていない。
ただでさえ、元恋人同士という設定にドキドキしているのに。
「っ、えと、曜さん、あの……」
「今は、持田雪矢」
「な……」
曜さんは自分の役名を呟くと、そのまま私をソファに押し倒した。
「ほら、次のセリフ」
つ、次のセリフって言ったってこんな状況で出てくるわけがない。
台本に目を戻してもまともに文字が読めないほどにはパニックだ。
相手はテレビで見ていた俳優さん。
ママとかっこいいね、素敵だねって画面越しで見ていた人だ。
そんな人が今、色っぽい瞳で私のことを見下ろしている。
頭が追いつかないなか、やっと次のセリフを見つけることができて。
「ゆ、雪矢くん……」
そう小さく呼べば、フッと曜さんが笑った。
全然、違う人みたい───。
「チサ、嫌じゃないなら目つぶってよ」
「……っ」
曜さんの大きくてゴツゴツした手が、私の耳を撫でて。
背筋がゾクゾクする。
こ、これって……。
「何してんの」
っ?!



