コンコンッ
「純恋」
「なに〜」
ドアの向こうからママの声がして、枕から顔をムクッとあげて返事をする。
「ごめんね。その、ひとりになりたい時に」
「あ、ううん。別に大丈夫だけど」
私がそういうと、ドアが開けられてママがひょこっと顔を出した。
ママは、私が翔のことをずっと好きだったことを知っているから、
ママなりに気を遣ってくれて、ここ2日ものすっごい優しい。
金曜日の放課後にめちゃくちゃ不細工な泣き顔を晒しながら帰ってきたもんだから、
普段口うるさいママもまるで腫れ物を扱うみたいに私に優しく接してくれて、これはこれで悪くないなと思う。
「今、宗介くんが来ててね、純恋に話があるみたいで」
「えっ……宗介さん?」
宗介さんこと、木梨 宗介さんは、パパの学生時代の後輩。
中高と同じバスケ部だったらしいパパと宗介さんは、うちでお酒を飲んだりご飯を食べる仲で。
そんな宗介さんが私なんかになんの話があるんだろうか。
今まで挨拶程度の会話しかしたことがないから戸惑ってしまう。



