「着いた」
相良くんが声を発した方に目を向ければ、そのには青い空と海が視界いっぱいに広がっていた。
太陽の日差しを浴びて、キラキラと波打つ海。
「わー!!あの時のままだ〜!私たちはこんなに大きくなったのにね!」
嬉しさではしゃいでよくわからないことを口走ると、マスクを取った相良くんが「なにそれ」と笑って。
キュンと胸が鳴った。
景色は何にも変わっていない。
ここにまた相良くんと来られたことがすごく嬉しくて。
私たちは当時のようにふたりで砂浜を歩いて腰を下ろした。
「丸山さんの笑顔も、この景色と同じ。ずっと変わらない」
相良くんが海を見つめながらそう呟いてこちらを見た。
「……え?」
「初めてここで丸山さんと出会って、歌を褒めてもらって。だから俺、歌手になろうって決めたんだ。丸山さんにとっては何気ない言葉だったかもしれないけど、俺にとってはすごく嬉しくて」
「へ……本当に?」
あの時の私の言葉がきっかけなんて……。
そんなこと言ってもらっていいのだろうか……。
「うん。だから、丸山さんがいなかったからそれ宙は結成されてないし、この間のライブだってもちろんできてないから。……俺、丸山さんに助けてもらってばっかりだよ」
“ありがとう”
目を見て真っ直ぐ、相良くんがそう言った。



