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「わー懐かしい……」
駅のホームに降りた瞬間、潮のにおいを含んだそよ風が肌に触れる。
「あれから来てなかったの?」
「何回かは来てたんだけど、小5の時におばあちゃんが亡くなってからは、それっきりかな」
「そうだったんだ……ごめん、俺何も知らなくて」
「相良くんが謝ることないから!」
それ宙のライブを観に行った日から数日後の土曜日。
私と相良くんは、私たちが初めて出会った田舎へやってきた。
駅までは宗介さんに送ってもらって、電車にはふたりで乗って。
あれだけたくさんのファンに愛されている相良くんのことだから、人混みに行くとバレちゃうんじゃないかとヒヤヒヤしていたけれど。
やっぱり相良くんはオーラを消す天才で。
マスクを一枚してるだけで大丈夫だった。
ふたりでよく遊んだ海までの行き道を歩きながら、どんどん思い出が蘇る。



