近くにいるファンの子達も、ほとんどが彼の歌を聴いてすすり泣いていた。
私も同じように感動するのと同時に、彼がものすごく遠い存在であることを改めて知って苦しくもなる。
手を伸ばしても、全然届かない距離。
相良くんが歌えば歌うほど、会場の熱気が増してその気持ちは強くなっていく。
エンプのライブに参加して唯十くんを見てもそんな風に思わなかったのに。
相良くんが数曲を歌い終わって。
感動とともにどこか黒い感情が心に残ったままの自分に嫌気がさして、ギュッと拳を握った時だった。
「……次の曲は、まだ披露したことのない、みんなの前ではじめて歌う曲です」
え……。
「新曲ってこと?」
「やばいって、サプライズすぎ!」
「泣く」
相良くんのセリフに会場が少しざわつく。
「聴いてください。『夕日隠れ』」
っ?!
その瞬間、ベースの音が響いて、すぐにわかった。
これ……私と一緒に歌った曲だ。
熱を出して、相良くんの歌声が子守唄になってくれてよく寝られたあの日を思い出す。
……ここで、歌ってくれるなんて。



