「え、丸山さん……?なんで……」

そりゃ、そうだ。

1ヶ月限定でさよならだったはずの人間が、またこんな特別なところにひょこっと現れているんだから。

「あ、えっと、その……唯十くんから、相良くんが歌えなくなってるって聞いて…その……」

「え?なにそれ」

「へ?」

ポカンとしている相良くんと目が合って、間抜けな声が出る。

相良くん、今、なにそれ?って言った?

心配させないようとか強がって隠している感じにしては少し違う気がする。

「唯十、お前……」

と何かを悟ったように相良くんが唯十くんを見る。

「事実でしょ。純恋ちゃんいなくなってから、雫久の歌、なんにも響いてこないから。歌えなくなってるようなもんじゃん」

っ?!

え。
ど、どう言うこと?!

何がなんだかわからない私をよそにふたりの会話は続く。

「何言って……」

「自覚してるくせに。純恋ちゃんが来る前は、何かを探し求めてるみたいな必死な歌い方が、聴く人にも突き刺さっててよかった。純恋ちゃんが来てからは、探してたものが見つかってそれを包み込んでるみたいな柔らかい歌い方になってて。でも、今はどれも違う。何もない。空っぽだよ。リハーサル見て思った」

唯十くん……。