唯十くんにキスされそうになって、相良くんの顔が浮かんだ。

アイドルに対しての憧れからくる好意と、恋愛の好きは全然違うことを知った。

唯十くんへの好きの気持ちと相良くんへの好きの気持ちは、別物だ。

いろんな感情が入り混じって涙となって溢れていると、突然、空気がふわっと動いて、私の体は唯十くんの腕の中にいた。

「イジワル言ってごめんね。冗談だから」

「……うぅ……どっから、が」

私のことを好きと言ったこと?
思わせぶりだって言ったこと?

「それは、純恋ちゃんのご想像にお任せする」

うっ。唯十くん、普段はものすごく穏やかで爽やかなのに。

そんな言い方するなんてやっぱり意地悪だよ。

「ただ、俺にとって、純恋ちゃんも雫久もすっごい大切な存在だってこと」

っ!?

なんで……今、唯十くんの口から相良くんの名前が出てくるんだと、驚いて思わず顔をあげると、

唯十くんが満足げに、いつもの爽やか笑顔で笑っていた。

「唯十くん……」

「雫久のこと、また助けてくれないかな?純恋ちゃん」

「助けるって……」

私が相良くんのこと助けたことなんて……。

「カイトくんの手、また引っ張ってよ。みーちゃん」

「え……」

カイトくんって、私が昔一緒に花火をした男の子。なんで今その子の名前が……。

しかも、『みーちゃん』は、その子が私をそう呼んでいて。

なんで、唯十くんがその呼び方……。