ずっと大好きだったアイドルに、一番の推しに、好きだって、恋人になってなんて言われている。

夢みたいなこんな状況、前世でどれほど徳を積んだら起こるんだ。

「純恋ちゃん」

すごく優しい声が私の名前を呼んで。
彼の手のひらが私の頬に触れて、目を合わされる。

バチッと視線が絡んだ瞬間、ドキンと大きく心臓も跳ねて。

徐々に、唯十くんの整った顔が近づいてくる。

これって……。

唯十くんが好きだ。

彼のパフォーマンスや歌に、ずっと助けてもらっていた。

優しい声も、笑顔も。全部。
私の中ですごく大切。

でも……。

「……っ、ご、ごめん、なさい」

サッと視線を下に落としてそう呟いた。

喉が熱い。

さっき、ソフトクリームを食べて冷やしたばかりだと言うのに。

唯十くんの顔が見られない。

「……謝るってことは、俺とは付き合えないってこと?」

「……」

その質問に、しっかり頷く。

「俺に好きだって散々言っといて?思わせぶりだよ。悪い子だね、純恋ちゃん」

聞き慣れない、唯十くんの乾いた笑いと低い声。

「……っ、それは、違っ……その、ごめんなさい、私……」

大好きなアイドルとふたりきりで過ごす特別な時間。

私の心にはずっと別の人がいた。