お互いの鼻先が触れそうな至近距離と、ツンと香るお酒の匂いに私まで酔ってしまいそうな感覚に怖くなって。
ギュッと目を瞑ると、
「ちゃんと思い出してよ、俺のこと」
そんな苦しそうな声が耳に届いて、
「えっ」
うっすら目を開ける。
思い出してってどういうこと……。
「ムカつく……俺はずっと悩んでいるのに。丸山さんは俺じゃない、違う人のこと考えているから」
なにそれ……。
そんな言い方まるで、相良くんが私のこと──。
再び視線が絡めば、彼の瞳に私が映っていて。
酔っていない時も、こんな風に私のことを見てくれたらいいのに、なんて。
ううん。
違う。
やっぱり、こんなのいけない。
お酒の勢いでなんて──。
「──いやっ!!」
そう叫んだと同時に、ガチャッと玄関のドアが開いた音がした。
誰か帰ってきた!!
私の声が聞こえたからか、急いでこちらに向かってくる足音がして。
「純恋ちゃん!?」
という曜さんの声がリビングに響いた。



