「──く、雫久っ」
「っ、え」
麻飛に名前を呼ばれて、ハッと我に返る。
「もう、なーにぼーっとしてんの〜。来月、雫久のとこライブでしょ、どうよ調子は」
「……あー。うん」
「うんって!そんなテンションでライブやるか普通!」
「……」
麻飛のテンションには日頃からついていけないけど、今日は特にそう感じる。
「雫久も寂しいんだよね、純恋ちゃんが帰っちゃうの」
と唯十が嬉しそうな顔をして言う。
まるで俺のことを煽っているみたいでイライラする。
「俺たちに比べて雫久の方が純恋ちゃんといる時間長いもんなー。そりゃ寂しいかー」
と麻飛が呑気に言う。
「……別に」
素直に寂しいなんて言えなくてそう呟けば、横からさらに唯十が声を出した。
「俺ももう少し純恋ちゃんといろんなことしたかったなー」
カチン。
俺の中で、何かが切れた音がした。