相良くんが謝るってことは、さっきのってやっぱり……。
勘違いじゃないってことだよね?
「……いや、その、私の方こそ、ごめんなさいっ!急に、顔向けたし、えっと……」
目の前の相良くんが、自分の口元を手で塞いで呆然としているのを見て、じわじわと顔が熱くなる。
でも……。
『自分は特別だとか思い上がるなよ』
『アイドルとファンの線、ちゃんと引けってこと』
以前、まだ出会ったばかりの時に相良くんに言われセリフが頭によぎった。
「ごめん……」
「ほんと、大丈夫だから!今のは、ほら、事故!」
また謝る相良くんに、笑って言う。
ちゃんと、笑えているだろうか。
華やかな世界にいる相良くんにとって、こんな風に異性と至近距離になることなんてそんなに珍しいことじゃないだろう。
ミュージックビデオで彼が女優さんと自然体でお芝居していた光景を思い出す。
ただの事故。私と相良くんの間には何もないから。
こんなことでいちいち過剰に反応される方が、彼にとっては面倒くさいはずだから。



