彼の笑顔を見て自分の胸の鼓動が速くなっているのが無性に恥ずかしい。
こんな風になっているのはきっと私だけ。
「……カセットコンロってこっちにあったっけ」
この感情を悟られないようにと、逃げるように相良くんから距離をとって。
調理台の反対側にある棚の扉を開ける。
彼に背を向けながら、ドキドキしているのを落ち着かせようと少し呼吸を整えていると。
「あーーそっちじゃなくて、多分もう少し右に──」
っ?!
「え──」
突然、耳元近くで声がしたので、びっくりして思わず反射的に振り返った。
それが、いけなかった──。
視界は、目を見開いた相良くんの顔でいっぱいで。
唇には柔らかい感触。
なっ。
これって──。
「っ、ごめん!!」
すごく長い時間、止まっていたような気がした。
慌てた相良くんが勢いよく私から距離をとって、顔を真っ赤にしながら謝る。



