こんなの迷惑に決まっているのに。
相手はプロの歌手。

タダで聴こうだなんて。
さすがに失礼すぎる。

病み上がりでまだ頭がボケっとしてたのかも。

口にして初めて自分の気持ちを理解しながら、さっきの言葉を撤回しようと思っていると、

突然フッと私のおでこに暖かいものが触れた。

なんだろうと顔をあげると、その正体は相良くんの手のひらで。

そのまま視線がバチッと絡んだ。

その瞬間、なぜかものすごく恥ずかしくて思わず目をそらす。

なに……これ……。

「……っ」

「ん。熱も下がってるみたいだし。いいよ」

そう言った相良くんが、さらにドアを開けた。

これって……。

部屋の中に入ってもいいってことなのかな……。

遠慮がちに足を踏み入れると、ドアを閉めた相良くんが、すぐに部屋の中央にあるローテーブルの横に座ってギターを持った。

「家では極力歌わないようにしてるんだけど。メロディーとかフレーズ降ってきたらどうしてもすぐ撮っておきたくて。結局そのままスイッチ入って今みたいな感じになるんだ。うるさかったよね。ごめん」