彼女のセリフに、胸がドキドキと熱くなって、なんて答えていいのか分からなくなっていると、
遠くから『みーちゃん』と呼ぶ声がして、その声がだんだん大きくなっていったかと思えば、
俺たちふたりしかいなかった砂浜に、おばあさんがやってきた。
『みーちゃん!空がオレンジ色になる前に帰って来なさいって言ったでしょ?』
“みーちゃん”
俺が彼女の名前を知ったのはその時。
名前、と言っていいのかわからないけれど。
『おばあちゃん!ごめんなさいっ!でも今、帰るところだったんだよ!見つけたの!カニ5匹!』
『カニ?』
『おじいちゃんが、5匹見つけたらいいことあるって』
『……え?まったあの人はデタラメを……。とりあえず早く帰るよ。あれ、そっちの子は?見ない顔だね』
『カイトくんだよ!カイトくんもおじいちゃんちに遊びに来てるんだって!』
『あらそう。ありがとうね、みーちゃんと遊んでくれて。あそうだ、スイカあるからカイトくんのところにもお裾分けしましょうか』
そうして、俺とみーちゃんはお互いの祖父母の家が隣同士だったこともあり、1週間、毎日一緒に遊ぶようになっていた。



