『ひとりだと暗くなっちゃいそうだから!お空がオレンジ色になるまでに探さなきゃなの、お願い!』
必死に言う彼女に『わかった』と小さく返事をすれば、満足げに笑った彼女が俺の手を引いた。
本当は、その時すぐに彼女の名前を聞きたかったけど。
彼女の勢いが凄すぎて全然対等に話せなかった。
当の本人は、自己紹介よりも頭の中カニでいっぱいだったんだろう。
でも、それが不思議と嫌じゃなくて。
どうして母さんは俺のことを置いて行っちゃったんだろう、毎日そればっかり考えていたのが、
その時間だけ、彼女と5匹のカニを探すことだけに必死で、はじめて、母さんのことを考えなかった。
あたりがオレンジ色に染まり出しそうな頃、
『あ、いたっ』
『え、どこ?!』
『ほら、そこ』
『わっ!!ほんとだ!!』
ようやく5匹目の小さなカニを見つけることができて。
『やった!これでいいこと起こるよ〜!あ、でも、カニ見つける前からいいこと起こってたね』
『え?』
『カイトくんとお友達になれた!』
『……っ』
今思えば、この頃から、人たらしと言うか無自覚な子だった。



