あんなことを言っていたけれど、彼女がエンプと唯十にゾッコンなのははたから見てて一目瞭然なわけで。
いや……丸山さんが唯十を好きだからってなに?
当時のことを、例え彼女が覚えていなかったとしても、
彼女にかけてもらった言葉のおかげで俺が歌手を目指すきっかけになったことをちゃんと話して感謝を伝えればいいだけなのに。
どうして俺は今、それをためらっているんだろうか。
あの時間を、俺だけが鮮明にずっと覚えてて忘れられない大切な思い出だったのに、丸山さんに忘れられていたのがショックだったから?
昔、俺を見てくれていた彼女が、今は別の人を見て目を輝かせているから?
何……俺、もしかして。
嫉妬してんの?
自分の顔が熱を持っていくのがわかる。
嘘だろ……。
……今さら、自分の気持ちに気づくなんて。
大切な思い出以上に、“みーちゃん”は俺の初恋で俺は今も……。
目の前の彼女のことが好きなんだと。



