「カイト、くん……」
「え?」
思わず呟いた私の声に、曜さんが反応する。
「あ、すみません……ちょっと昔のこと、思い出して。はじめて、線香花火をやった日のこと。田舎のおばちゃんちで、やったなあって」
「へー!いいねそういうの」
「家族で?」
柔らかく笑う唯十くんと、興味津々の麻飛くん。
「いや……私だけ、数週間遊びに行った時で。……それで、たまたま会った同い年くらいの男の子と。彼も、彼の祖父母の家に遊びに来てて、1週間だけだったけど、遊んだ記憶があります。うっすらですけど。名前は……カイトくんって言ったかな……」
「カイトくん!その子が純恋ちゃんのはじめて奪ったってことか〜」
は、はじめてって……。
「曜くん、変な言い方しないで」
と麻飛くんがピシッとすかさずツッコんで。
私は苦笑いしたまま、ふと、正面に灯っていたはずの明かりが急に見えなくなったので顔を上げれば。
相良くんの線香花火の火が消えていた。



