てか……。
髪の毛食ってるし……。

静かに近づいて、ゆっくりと、彼女の口に触れていた毛先をそっと直していると、

耳から外れた片方のイヤホンから音がかすかに漏れていることに気付いた。

この曲……。

確か、今日、丸山さんはこの曲を聴いて泣いていた。

こんなこと言うのはどうなのかと思うけれど、あの泣き顔を見たとき、ものすごく綺麗に泣く子だって思った。

そして、俺の曲を聴いたらどんな顔をするんだろうって純粋に気になったりして。

変なの。

「んっ……」

「……っ!」

突然、モゾモゾと動いた彼女の口がわずかに開かれたかと思えば、

「……か、ける」

と切なそうな声が漏れた。

翔って……。
丸山さんが失恋したって言ってた幼なじみだろうか。

寝言で呼ぶなんて、全然吹っ切れてねぇじゃん。

そう心の中でツッコミながら、なぜか胸がチクッと痛んだ。