千景くんは魔法使い



その日の帰り道。お母さんから頼まれた買い物を済ませて、私は河川敷を歩いていた。

土手を吹き抜けていく風が夏の香りを運んできて、だだっ広い空き地では子供たちがサッカーをして遊んでいた。

……元気だな。その様子を微笑ましく見ていると、子供たちに混ざって制服を着た男の子が一緒になってボールを蹴っていた。

見覚えのある顔に、私は足を止める。

まるで私の視線に気づいたかのように、男の子はこちらを見ていた。

そして子供たちの輪から外れて、土手を登ってきた。

……え、うそ、こっちに来る?

戸惑いながらも露骨に逃げるのは不自然な気がして、私はその場に留まった。


「今日は小野寺と一緒じゃねーんだな」

それは、制服姿の真田くんだった。

私服だと少し不良っぽく見えていたけれど、うちと同じ学ランを着ていると、荒々しさが抜けて普通の14歳の男の子に見えた。

「昨日はその、帰ってなんて言ってごめんなさい」

元はといえば真田くんが千景くんのことを煽ったのが原因だけど、それでも追い返してしまったことを気にしていた。 

「それはべつにいいけど、あの揺れはなんだったんだよ。速報出てなかったし、地震じゃねーだろ」

千景くんの心の乱れに反応して魔法が出てしまったなんて、説明できるはずがない。