千景くんは魔法使い



「どうして笑うの……?」

「いや、だって、こういう時に魔法を使えばよかったのに、全然頭になかったなと思って」

「?」

「つまり、とっさに体が動いたってこと」

きっと千景くんは私に当たりそうになっているボールを追いかけてきてまで、守ってくれた。

私は何度、千景くんに助けられているんだろう。

ありがとうって、言葉だけじゃ足りない。

私は千景くんの手を子供みたいにぎゅっとした。

「え、な、なに?」

いつも冷静な千景くんが、とても動揺していた。

その姿が不覚にも可愛くて愛しくて、私はさらに手を握る力を強くする。

「私も、千景くんになにかあったら守るからね!」

千景くんの魔法が自分への罰のために芽生えたものだとしたら、私はそれを軽くしてあげたい。

それで、心から笑ってほしいと思う。

「ありがとう、花奈」

千景くんは瞳を細めて、嬉しそうな顔をしていた。