千景くんは魔法使い



「ねえ、なにしてるの?」

無心で草を抜きまくっていると、誰かに声をかけられた。ハッと顔を上げると、千景くんが不思議そうな顔で私のことを見ていた。

「あ、えっと、草取りを……」

田村先生とは普通に喋れるのに、千景くんだとまた私は緊張してしまう。

「昼休み、あと10分で終わるよ」

「ええっ、もうそんな時間?」 

この昼休みで抜ききるだろうと思っていたのに、花壇に生えている草はまだ半分以上残っていた。

「ち、千景くんは……どうしてここに?」

「廊下を歩いてたらたまたま遠山さんがここにいるのが見えたから」

中庭に来るためには一旦昇降口を通って、靴を履き替えなきゃいけないのに、千景くんは上履きのままだった。

どうやって、ここまで来たんだろう。

まさか窓からってことは……ありえるのかな。魔法が使える千景くんなら。

「全部、抜いてあげようか?」

「魔法でってこと?」

「うん」

「だ、誰かに見られちゃうかもしれないし大丈夫だよ!それに私草取り好きだし、終わらなかったぶんはまた明日やるから平気!」

魔法に制限なんてないのかもしれないけれど、草取りのために魔法を使うなんて、もったいない。