千景くんは魔法使い



「またひとりで草むしりしてるんですか?ダメですよ。この前、腰が痛いって言ってたじゃないすか」

中庭にいたのは、園芸部の田村(たむら)先生だった。

先生と言っても年齢は60歳を越えていて、非常勤教師としてこの学校にいる。

普段は人見知りで会話もままならない私だけれど、田村先生が遠い場所に住んでいるおじいちゃんに似てることもあって、唯一自分から話しかけられる存在でもある。

「でも遠山さん、見てごらん。この前綺麗にしたばかりなのにもうこんなに草が生えてるんだよ」

「うわー、本当ですね」

中庭には花壇があり、そこには色とりどりの花が咲いている。

園芸部の人数は10人くらいいるらしいけれど、みんな最初の顔合わせだけを行ったあとは、ほとんど部活には来ないらしい。

田村先生がいつも花壇の水をあげたり、種を植えているのは何度も見かけていたから、いつの間にか私も時間があればこうして手伝うようになっていた。

「草は私が取りますよ」

「じゃあ、お願いしていいかな。僕は育てた花を寄せ植えをして、校舎のどこかに飾ってもらおうと思ってるんだ」

「いいですね!完成したら見せてくださいね」

田村先生と別れたあと、私はセーラー服の袖を捲って草取りを始めた。