千景くんは魔法使い



「遠山さん」

席替え終わりの休み時間に、桃園さんから声をかけられた。

「一番後ろいいね!私なんて、廊下側の前から二番目だよ。すっごく微妙じゃない?」

千景くんの隣になった私のことをみんなはあれこれと言っているのに、桃園さんはそんなこと気にしていないようだった。

みんながこっちを見てる。なんだかヒソヒソと耳打ちまでしてるし、もしも桃園さんまで悪く言われていたらどうしよう……。

もじもじとするだけの私に助け船を出してくれたのは……。

「でも席替えって学期ごとにやるって先生が言ってたし、あと2カ月だけじゃん」

千景くんだった。

「えーでもその2カ月が私にとっては憂鬱だよ。なんなら小野寺が私と席かわってよ」

「無理。前だと寝られなくなるし」

「うわ、寝てても成績いい人は本当に罪だよね!」

桃園さんって、千景くんのこと名字で呼んでるんだ。なんか新鮮。

そしてなんだかふたりはとても仲良しに見える。ふたりの間に挟まれて固まっている私に桃園さんが肩を叩いてくれた。

「心配しなくても大丈夫だよ。私たち同小なだけだもん」

「し、心配ってそんな……」

「あ、今日の部活はね、三年生いないって!だからたくさんコート使って練習しようよ」

また桃園さんは気さくに誘ってくれた。

桃園さんは他のクラスにも友達がいるようで、呼ばれてるからと思い出したように教室から出ていった。

……桃園さんって、元気でサバサバしてるな。

今まで友達と呼べる人はひとりもできたことがないけれど、桃園さんみたいな子と友達になれたら、きっと学校も楽しくなるだろうなと思う。

「俺が言うのも変だけど、桃園いいやつだよ。中学の時からあんな感じだし、裏表もなくて付き合いやすいと思う」

「そ、そうなんだ……」

でも私が友達になりたいと思っても、桃園さんはそう思ってないかもしれない。

それにやっぱり私は自分に自信がないから、一歩前に踏み出す勇気がもてない。