千景くんは魔法使い



「ねえ、ねえ、遠山さん」

突然に名前を呼ばれて、過剰なくらいにビクッとなる。私の机の横には学級委員の女の子が立っていた。 

「昨日の英語のノート出してないでしょ?」

そういえば昨日の放課後に、各自ノートを教壇の上に置いておくように話があった。

……ぼんやりとしていたせいで提出をし忘れていた。

「今、ある?」

早く出してというような感じで、右手を差し出されている。

「……あ、えっと……その」

「もしかして家とか?」

声を出せない代わりに、首をこくりと縦に振った。

「じゃあ、明日自分で職員室に届けてね」

「は、はい……」

私は肩をすぼませて小さな声を出した。

そのあと学級委員の子は自分の友達のところに行き「なんかああやって怯えられると、私がいじめてるみたいに見えて嫌だ」と、もらしていた。

その声はばっちりと私にまで届いてきて、ますます気まずさで体を小さくさせていた。