興奮を隠しきれない私のことを見て、千景くんがクスリと笑った。

「遠山さんって、そんなに大きな声が出るんだね」

たしかに目の前で起きたことがすごすぎて、緊張なんてどこかに飛んでしまっている。

「学校でもそうやって喋ったらいいのに」

「え、ち、千景くんこそ、なんか学校よりも明るいっていうか、その」

「だって俺に声をかけてくる女子って、声がキーキーしてて苦手だし、じろじろ見られるのも好きじゃないから」

大人っぽくてクールな印象があったけれど、こうして話していると千景くんは年相応の男の子だ。

「俺が魔法を使えること、誰にも言わないでいてくれる?」

きっと千景くんは、自分が魔法使いなことを隠して生活してる。

それでも、何度も私のことを助けてくれた。

バレたくないのに、助けずにはいられない千景くんはやっぱり優しい人だと思う。

「絶対に言わないよ!約束する!」

また声が大きくなってしまった私を見て、千景くんがまた瞳を細めた。

「立てる?」

そう言って、千景くんは私に手を差し出してくれた。おそるおそる手を伸ばすと、座っていた私のことを千景くんが力強く引っ張ってくれた。

その反動で、私のおでこが千景くんの胸に当たる。

「ふたりだけの秘密ができたね」

千景くんは少し意地悪な顔をしていた。

千景くんとの距離が近いことで、心臓の鼓動がまた速くなってくる。

今まで良いことなんてなにひとつなくて。

これからだって私の毎日が色付いていくことなんてないと思っていた。

でも、千景くんという魔法使いに出逢って、自分の世界が少しだけカラフルになったような気がしていた。