「俺、花奈がいたから前に進めた。花奈がいなかったら、サッカーをまた始める勇気もなかったと思う」

千景くんはそう言って、私の手を柔らかく握った。そして……。


「俺は花奈のことが好きだ。だからこれからも俺の隣にいてほしい」

千景くんがまっすぐに伝えてくれた。

目の前がパッと明るくなったような気がして、じわりじわりと嬉しさが込み上げてくる。


「――花奈、俺の彼女になってください!」

ずっとずっと千景くんは遠い存在だと思っていた。

でもこれからは違う。手を伸ばせば触れられて、顔を上げれば目と目が重なり合うような、そんな一番近い場所にいられる。


「……はいっ。私も千景くんのことが世界で一番大好きです!」

その瞬間、千景くんが優しく私のことを抱きしめてくれた。

私は負けないように、千景くんの背中に手を回して、ありったけの力でぎゅっとした。


「やっぱり千景くんは、魔法使いだね」

だって、こんなにもすぐに私の心にたくさんの花を咲かせてしまうから。

「逆だよ」

「え?」

「出逢ってから今日まで俺は花奈のことしか考えてない。俺に魔法をかけたのは、花奈だよ」

千景くんがにこりとした。


「これからは俺の彼女としてよろしくね」

千景くんの顔がゆっくりと近づいてくる。

柔らかな唇が私の前髪に触れる頃には、幸せすぎて涙があふれていた。


「こちらこそ、よろしくお願いします」

誰よりも大切で、大好きな千景くんは今日――私の彼氏になった。