千景くんは魔法使い



それからみんなで近くのスライダーに向かった。私はスピードの速いものが苦手なので、下で待ってることにした。

「……ひ、久しぶりだね」

私の隣には千景くんもいる。

「……うん」

千景くんは返事をしてくれたものの、やっぱり私と目は合わせてくれなかった。

周りはみんな楽しそうに遊んでいるのに、私たちの間に流れている空気は重たい。


……私、今まで千景くんとどうやって喋ってたっけ?

心の距離が離れすぎていて、そんなことさえ思い出せなくなっていた。

みんながスライダーから帰ってきたあとは、多目的プールで各々に泳ぐことになった。

桃ちゃんはスイミングに通っていたこともあったようで、男子たちと泳ぎを競い合っている。

私はレンタルコーナーでビート板を借りて、ぷかぷかと浮きながら、木陰で座っている千景くんに視線を送った。

千景くん、全然楽しそうじゃない。

もしかして、私がいるからプールに入ってこないのかな。

千景くんに会いたくてたまらなかったのに、会わないほうがよかったんじゃないかって、胸が痛い。


「ちょっと、やめてよ」

「いいだろ、ほら!」

近くにいるカップルが水を掛け合ってはしゃいでいた。

いいな……と思いながら、わたがしのような雲を見つめていると、カップルの彼氏が私にぶつかってきた。

その反動で手からビート板が離れる。