勉強が一通り終わる頃に、部屋のドアがノックされた。
「晩ごはんの支度できたわよ」
それは千景くんのお母さんだった。
時計を気にしていなかったから気づかなかったけれど、いつの間にか勉強を始めて4時間余りが経過していた。
2階から1階へと下りてリビングに向かうと、食欲をそそるようないい匂いが漂っていた。
ダイニングテーブルには、私の希望どおり中華料理が並んである。餃子に牛肉とピーマンの炒め物。エビチリ、麻婆豆腐、たまごスープまで。
「千景はお箸用意して。あ、お父さんのぶんはまだいいわ。仕事で遅くなるみたいだから」
「わかった」
「花奈ちゃんはご飯どのくらいよそう?」
「あ、自分でします!」
「いいのよ、花奈ちゃんはお客さんなんだから」
千景くんのお母さんに誘導されるようにして、私は椅子に腰かけた。箸を用意してくれた千景くんは私の隣へと座る。
「母さん、ものすごく張り切ったみたい」
千景くんは同時に普段より二品は多いと教えてくれた。
「……私、お手伝いしなくてよかったのかな?」
こんなにたくさんの料理をひとりで作るのは大変だったはずだ。
「大丈夫だよ。母さんは料理作るの好きだし、今だってほら。いっぱい作れて鼻歌うたってる」
たしかに、千景くんのお母さんはとてもご機嫌だった。



