部屋?…おいおいおい。

俺達は、仮にも付き合っていた男女だぞ?

そんな二人が密室なんて。

それ、どういう意味かわかってんの?

まさか…。



(………)



しかし、そこで何故か。

なずなの顔が頭の中に浮かんでしまった。



「…いや、良い場所ある。そこに行こう」



よからぬ事を考えている場合じゃない。

だって薫は…あんなカタチで俺を裏切った女だぞ。

ほとぼり冷めた頃に、こうやってノコノコと姿を現すのもおかしい。



やましいことをしているワケじゃない。

なのに、何故か。

こう、薫と二人でいるところを、なずなにだけは見られたくない。

そんなことを、思ってしまった。




薫をエレベーターに乗せて連れてきたところは、最上階のバー。

昨日、親族たちが飲み会をしていたバーだった。

…ここなら静かだし、今現在パーティーの真っ最中だから誰も来ない。



店員さんに事情を話すと、昨日少しだけ顔を出していた俺のことを覚えていてくれたのか、「どうぞどうぞ」と外の景色が見える席へ案内してくれた。