…薫とは、あの件があってからまともに話をしていない。

同じ教室にいても、お互いその存在は見えないかのように。

最初は、ちゃんと話し合わないととは思っていたけど…兄貴と堂々とイチャつきながら歩いている姿を何度も目撃したり、校内での二人の噂が激化しているのを知ったら、もうどうでもよくなった。



なのに、何で今さら…。

もう、一年以上経ってるんだぞ?



「まあ、過去は水に流して話相手ぐらいになってあげたら?」

「…は?!」

「だって、今の伶士にはなずながいるじゃん。どうせ過去の女でしょ?」

「な、なずなとはそんなんじゃねえし!」

ホントに、どの口がそれを言う。

何の悪びれもなく!

兄貴が、元はと言えばの当事者だろ!



「じゃ」と、肩をポンと叩かれる。

すれ違い様に「ふふっ」と、兄貴の漏れた笑い声が聞こえた。

このっ…!

しかし、振り返った時には、兄貴はすでに向こうに行ってしまい、早速若い女性に話し掛けていた。