わっ。じいちゃん、昨日もちょっと顔見たけど、久々。
去年の新年会ぶりだから、丸一年ぶり。
「伶士ぃぃっ!こっちに来い!早く!いいから!」
「あ、はい…」
じいちゃんは、親戚のおじさんたちに囲まれて埋もれてるが、そんな中でも大きく手招きをしている。
早く来い?何でそんなに急ぐんだか。
いや、この人の場合、せっかちなだけで、急ぐ意味はない。
俺も急いでなかったワケじゃないが、数秒でも待ちきれず、席を立って俺をお迎えに来てしまった。
「おぉ!会いたかったぞ伶士ぃぃっ!私の可愛い孫よ!」
「あっ…」
来るなり俺の手を引っ張り、自分の座っていた席へと連れていかれる。
いつも思うけど、何?このパワー。
70歳のパワーじゃない。さすがデカいグループの頭取。バイタリティあるな。
グレイッシュヘアーのくせに、やたらと体がガッチリ健康的だし。
「座れ座れ!私の可愛いサッカー選手!」
「…え、でも」
ここで、問題が生じた。
じいちゃんに着席を勧められるが。
座れと言われても、椅子がひとつしかない。
まさか、俺がその椅子に座って、じいちゃん立たせておくワケにはいかない…。



