「…お店勤務始めてからあっという間に指名客バンバンついて大人気らしいよ?…それに、黎愛以一家の息子にも気に入られてるみたいだしね?」
いひひ…と、菩提さんはやんちゃに笑う。
「まあ…伶士くん、あのアバズレ女と知り合いって聞いたから、伝えておこうと思って」
「え!わざわざ気を遣ってもらってすみません」
別にいいんだけど。
…しかし、この後。沙羅先輩は、すすきのNo.1の売れっ子泡姫となり、黎愛以一家の息子のもとへ嫁ぐことになるのは、もう少し後の話となる。
妖精は極妻となってしまうのだった。
でも…何だか、ホッとした。
沙羅先輩、食べられてなくて。
死んでなくて良かった…と、思ってる。
彼女を『助けたかった』と泣いていた、なずなも喜ぶんじゃないかと思って。
そう考えると、本当によかった。
「なずなも…ホッとしてるんじゃないんですか?何だかんだ彼女が助かって」
何気に、返した一言だったけれど。
「………」
菩提さんは、黙ってしまった。
…え?俺、何かマズイこと言った?
しかし、彼の方から「くくく…」と、笑い声が。
「いやー。実はなずなには言ってないんだよね」
「えっ?!な、何でですか!」



