「えっ?!な、何っ?!」



突然の出来事に、声が上ずってしまった。

そ、そんなコートの袖掴むとか!

乙女なこと…!

いや、乙女ですけど。



なずなは、俺のコートの袖を掴んだまま、恥ずかしそうにあっちの方向に目を逸らして言う。



「…さっき私が泣いたこと、誰にも言うなよ」

「は…」



少し、考える。



「…はぁ?」

「だからその…」



今度はもじもじし出した。

なぜ、さっきからそんなに恥ずかしそうにしてるんだ。



「…だから!…さっき私が泣いたこと、学校の奴らに言うなよって!…あぁっ!もうっ!」



そう言って、なずなはプイッと顔を背ける。

その横顔は、ぶうっとむくれていた。




私が泣いたこと、誰にも言うなよ。




…は?こいつ。

何言って…。



もしや…!



ちょっとちょっと、アイツ昨日怒られてえんえん泣いてたんだよ。

ぴえんなってたわ。

マジやばくね?




…と、俺が人に喋ると思ってんのか?!




人に泣いてたこと知られたくないとか。

マジで、意地っ張りの強がり。

負けず嫌いの極みだ…!